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2015年11月号 vol.24

「人が好きなんで」 - 町のみんなの秘密基地:ハッチタッチガレージ

2015年11月01日 00:11 by shogo_nakazato

ハッチタッチガレージ - 橋本さん
ハッチタッチガレージ店長の橋本孝至さん 

「東日暮里に新しいおしゃれなカフェが出来たのかな?」 それが「ハッチダッチガレージ」を初めて見たときの印象だ。

実際のそこは自転車屋だ。といっても、自転車は殆ど売っていない。 店の前のラックにさがっているお客さんの自転車や店先に見える修理工具なんかが、かろうじてそこが自転車好きの集う場所であることを示してくれる。

「こんなところにカフェ。。。?」と思いながらもあやうくお店の前を通過しそうになったが、店のガラス戸に白いペンキで書いてあった「…ガレージ」の文字を思い出した。あれは自転車屋だったか。そう気づいて自転車を引き返し、店の前に自転車を止めた。

ハッチタッチガレージ入口
ハッチタッチガレージ入口

この夏に買ったばかりのクロスロードのバイクはまだ僕にとっては乗り慣れない相棒。 一方、店の前に集まっているバイク達はあきらかにちょっとかっこいい。サイクルウェアに身を包んだ人たちもちらほらしている。少し暗い店内の壁一面にかかる工具たちと洒落たカスタムパーツのようなもの。

自転車マニアじゃないと入りにくいお店なのかなぁ~、なんて思いながら自転車を降りると、すぐに若いニット帽を被ったお兄さんが「どうも~」とにっこり出てきてくれた。

「ここ自転車屋ですか?」「はい、修理とかカスタマイズとかやる店です。お兄さんも何かカスタマイズします?」「いやいや、、そんなんじゃないんですけど、、ちょっとお店見てもいいですか?」「どうぞどうぞ」。始めて会ったのにやり取りが妙に自然体だ(笑)。肩の力が抜ける。

店主がお金を節約するためにほぼ全て手作りで作り上げたというお店の空間は、子どものころあこがれた秘密基地のような遊び心で溢れていて男心をくすぐる。かっちょいい。おいおい、こんな店がいつの間に出来てたんだ、と思う。そもそも店のセンターにあるのはバーカウンターだ。とても自転車屋には見えない。

ハッチタッチガレージ 店内

棚にはフィギュア、カウンターの上の本棚にはマンガがずらり。「なんでマンガなんですか?」「ぼくオタクなんですよ。」思わず笑ってしまう。

ハッチタッチガレージ マンガ棚

「ここいつ出来たんですか?」「今年の6月ごろですね。」もう4ヶ月以上経っている。いつも通る道のすぐ近くだが、微妙に通常ルートから外れていたので見落としていたようだ。聞けば、店の工事は自前でやったので2ヶ月もかかったらしい。

店主の橋本さんに話しを聞いた。

「東北の震災がきっかけですね」

きっかけは震災でした。地震で交通事情が悪くなっちゃったんで、どうしようかなと、自転車が通勤に便利だぞと。それで自転車乗り始めたんですけど、やっぱりお金がないんで自分で修理とかドレスアップとかやってたらだんだん楽しくなっちゃって。

ちょうどその時職場がなくなるって話があったんで、どうしようかな、何で食べていこうかな、って思ってたんですけど、自転車楽しいし自転車屋になろうかなって。

「もともといじるのが好きなんです」

ちょっと探してたら面白い店があって、人も探してたんでそこで働き始めました。

もともといろいろモノをいじるのが好きなんですよね。インテリヤとかエクステリアの特注ものを作る工房で一時期働いていたこともあります。

ハッチダッチガレージ - 接客中
お客さんとお店、というよりチームのような距離感

「ここに骨埋めよっかなって」

出身は千葉の船橋なんですけど。 このお店ができる7年前ぐらいから荒川区に来て一人暮らししていました。3年前に結婚したんですけど、荒川区にもう4年住んでたし、近所のバーなんかでも馴染みのお店がいくつかできていたんで、もう新規開拓するのもめんどくさいなって(笑)。このまま荒川区に骨埋めよっかなって思ってそのまま住んでます。

もともとこの辺すごい好きなんで、お店も作るとしたらやっぱりこの辺がいいって思ってたんですけど運良くここの場所が見つかって。最近引っ越しもしたんですけど、なんにせよこの辺を離れたくないなぁと思ってました。

下町なんだけど、適度な距離感もあるというか、自然体でいられるところですかね。

「穴あきボードも手作りなんです」

前の職場の常連さんや友達が手伝ってくれたんですけど、電気とエアコンとか以外は店の中のものはほとんど自分たちで触ってます。

床板も、天井の板も一枚一枚貼り付けて。。カウンターも作ったんです。鉄パイプ切って、溶接機借りて溶接して、組み上げました(笑)。 (工具がかかっている)有孔ボードの穴も、全部1つずつ開けました。だからよくみるとキレイじゃないです。インテリアの工房で働いてたときの経験が活きたかもしれません(笑)。

ハッチダッチガレージ 壁ボード
穴も全て自分で開けたというボード

「人それぞれのカラーに染められるとこかな」

自転車に決まったものは何もない。ってところが自転車の魅力です。 その人の好きなようにカスタマイズ、ドレスアップができるところ、自分の色に染め上げられたりするところが自転車の楽しみの一つかなと思っていて、それを支えられたらな、って思ってるんです。

ママチャリだってちょっと手をかけるだけで、愛着が湧くんですよね。そういうとこにも気づいてもらえるとな、なんていうのも思っていて、むしろママチャリとかもカスタマイズしていこうよ、そういうの積極的にやっていきたいなって思ってます。

「人が好きなんで」

新車を売らないわけじゃないし、もちろん場所の広さとかそういうのもあるんですけど、新車の販売って結構売りっぱなしになっちゃうことが多い。。んです。

でも、修理とかカスタマイズとかって、そのお客さんの使い方に深く入っていくことになります。その場限りの関係じゃない。そういうことが嬉しいんです。

ハッチダッチガレージ 手作りの時計
お客さんにもらったという自転車パーツを使った特製の時計

売った後もコミュニケーション続けていけるといいなって。そういうの大事にしたいって思ってるんで。

まあ人が好きっていうのもありますからね。お客さんとずっと一緒に歩んでいきたいし、お客さんが来たときに気を使わせるようなのは嫌なんです。だからお客さんにメンテナンス方法教えたりとか、あとは有料なんですけど工具と場所を貸したり(30分1080円 ※一部の工具を除く)とか、そんなこともやってます。工具の使い方もちゃんと教えますよ。

「できる限り、なんでもやります」

もともと勤めていたお店がミニベロとか、車輪が小さい自転車を専門にやっていたお店だったので変わったお客さんが多くて。フレームとかが小径車用にできていないことが多くて工夫をしてつけることをずっとやってました。

だからそういうことも含めて、自転車に関する一般的なことも含めてできる限り、なんでもやります、って感じです。お客さん自身がテーマなんで、見ためをかわいくしたいのか、早くしたいのか、軽くしたいのか、そういうお客さんの思いを大事にして一緒にいろいろ考えたいですね。

こうやってインタビューをしている間にも区内の自転車好きや、自転車で困っている主婦が次から次へと相談やパーツの取りつけに訪れる。

「あぁ、どうもどうも、どうすか調子は」こんな感じの会話がずっと繰り返される。橋本さんが何度も一緒に見てきたお客さんの愛車。すでにその自転車のことはわかっている様子が伺える。

ハッチタッチガレージ - 店内とお客さん
他のお客さんはバーでゆっくり

普通なら、「はい、修理お願いね」と作業が終わったころにまたお店に来たりするものだが、ここのお店では、そのままずっと、橋本さんの作業が終わるのを待っている人が何人もいる。

橋本さんが「セルフなんで」と言いながら、バーでお茶を出す。お客さん同士で少し会話を楽しみながら橋本さんの作業が終わるのを待っている。

その関係はお店とお客さんの関係とはちょっと違う、、一体なんだろうと思っていたらふと気づいた。そこにいたのは一緒に愛車の手入れを楽しんでいるチーム。お客さんはドライバー、橋本さんは専属メカニック。ハッチダッチガレージは町のみんなのガレージ。

どうやらここはそういう場所のようだ。

ハッチタッチガレージ - 橋本さん2


<店舗情報>


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