菊本和菓子店の大塚さんご夫妻
「取材とか照れくさいな。」はにかみながら話し始める「菊本」の大塚さん。
和菓子処「菊本」は、南千住仲通り商店街の南千住側入口、仙成食堂さんからすぐのところにある。必要なときにすぐ気軽に利用できる、そんな雰囲気のよくある和菓子屋さんだ。
お店の前にいつも立っているのは奥さんで、ご主人は奥で和菓子作りをしていることが多い。
- お店の歴史について教えてください
創業は昭和43年です。
最初は違う場所に仮店舗で出してたんですけどこの場所が売りに出たので平成8年に今の場所に移りました。
最初は親父とうちの姉さんで一緒にやっていて、自分はその頃は宇都宮の和菓子屋で修行に出ていたんですが、自分もこちらで働き出してからしばらくして姉さんが結婚してやめて、そこからは親父と2人でやってました。その後、家内と結婚し、今になります。
うちは貧乏でお爺さんが早くに盲腸で亡くなったんですよね。42才ぐらいで。それで親父が子どもだったんだけど早くに働くしかないと思い、9才の時に奉公に行き働き始めたんだよね。
甘いものも多少好きだったってのもあるかもしれないけど、まぁ、働かないといけないので紹介してもらった仕事が和菓子屋だったんですね。栃木の船橋屋ってところで、今はないんですけど当時はその辺では一番大きかったんですよね。
その後、銚子のほうでも働いて、20才の時、浅草の西村って和菓子屋にしばらくいたみたいですよ。その後ここの近くにあった菊水堂和菓子屋さんに移ってきたんです。今はそこは蕎麦屋になってます。親父は88才まで仕事をしていました。
- 大塚さんも子どものころから和菓子屋を継ぐつもりだったんですか?
子どものころは考えてないですね。レストランみたいのをやりたいなと思っていたころもありましたけどね。
一度は就職するつもりだったんですよ、給食を作る会社に。だけど布団持っていって住み込みでするっていう話しになり、それが嫌で辞めたんです。
で、うちの親父も年だったし、一緒にやるしかないな、ってな感じでした。 こういうと怒られるかもしれないけど、あんこ類がそんなに好きじゃないんで(笑)。まぁ、甘いもの食べないわけじゃないけど、そんなにやりたいって感じでもなかんです。だけど、他にやることもない。でも、やってるうちに、やめるわけにもいかなくなり、それでやってるかな。
たまたま親父の知り合いが宇都宮の和菓子屋に勤めてたんですよ。誰か私の修行先を紹介してくれないかと親父がその人に頼んだら、その人と一緒に宇都宮に行くことになったんです。宇都宮では2年ぐらい修行しました。後は和菓子の本を読んで勉強しました。
- お店の特徴を教えてください
自分で作りたいもの、、まぁそればっかりじゃなくて売れるものや新しいものを作っていかないとお客さんに飽きられてしまうので。
あんまり和菓子洋菓子って気にしないで作っています。プリンとかね。あとアップルパイみたいなものも作ろうって思ってます。新しいオリジナルのお菓子も作っていく予定です。
ちなみに、うちの親父は上生というか、練り切りが得意でした。私はあまり普段は作らないですが、注文があれば練り切りもやります。
- これまでに苦労したことがあれば教えてください
苦労、、苦労はあんまりね、、うちのかみさんのほうが苦労してるかな。。(笑)ぼくはノー天気でね。
苦労してるってみんなに言ったらきっと苦労してないよ!って言われそうだよ。
- あんまり苦労を苦労と思わない感じですか?
いやぁ、実際苦労してないと思うよ。
- お客さんとの記憶に残るエピソードがあれば教えてください
一度、どら焼きの注文を1000個受けた時がありました。
それと、お客さんと親しく会話が出来ることですかね。殆ど常連さんが多いですけど。
- オススメ商品について教えてください
当店オリジナル商品の千住焼きです。芭蕉饅頭も今年3月から売りだした商品で、良く売れてる一品です。
皮に芭蕉が好きだったと言われる豆腐を入れ、麦こがし、ミネラルの多い砂糖を使い、北海道産の小豆で作ったつぶあんを包んで作ってあります。
芭蕉饅頭は、皮はふぎりしてます。普通の饅頭はさっくり捏ねてコシを出さないようにミキサーにかけてぐるぐるやるんだけど、これは麩質っていって饅頭を膨らますやつなんだけど、それをブツブツに切って混ぜてます。値段が高くて少し目方もあるんですけど、少し豆腐も入れたりしています。
甘め抑えたこともあるけど、あんまり甘くなくてもおいしくないな、とか常に試行錯誤してますね。
芭蕉まんじゅうを一ついただき、食べてみる。
饅頭を割ってみるともっちりとした皮が裂けていく。たしかにコシがある。つぶあんのあんこはあっさりしていてとても食べやすい。おいしい。
「黒糖の色合いは茶饅頭と同じ色合いなんですが、茶饅頭とは区別したいんで、黒糖を入れずにちょっと高い砂糖使って自分で作ったカラメルで色をつけてるんですよ。」と、大塚さん。
たしかに黒糖の味は薄い。口の中にほどよく味が流れてくる。あんこはずっしりとたくさん入っていて皮は薄めだ。
- 今回出品する予定のだっちゃんについて教えてください
おでん用には、巾着に大福を入れたものを出します。大福をおでんに?と思うかもしれませんが、塩味の出汁の中で、大福の甘みが絶妙なハーモニーになります。
それから、かりんとう饅頭をやります。高温で揚げるんで、焦げないように揚げる揚げ加減に気をつける必要があります。普段よりは少しお値段も安く出します。かりんとう饅頭は、普段110円ですが、当日は100円です。
かりんとう饅頭も一ついただいた。
見ためはただの黒っぽい饅頭に見えるが、持ってみると表面は固い。これが「かりんとう」と名付けられた所以だろう。
かじってみると、すごく香ばしい。もともと私はかりんとう好きだが、これはかなりイケる。味は見ためほど甘くない。通常の饅頭より小さめのサイズだが、十分なボリュームだ。
香ばしい理由は、米の油で揚げるからなんです。米油じゃないとこういう味が出ない。酸化しにくくてね。値段は高いんで、一般に家庭では使わないですね。でも、これから人気が出ると思います。
- 「南千住」「仲通り商店街」はあなたにとってどんな存在ですか?
もう生活の中心というかね。二十歳のときから居ますから。
この辺は東京なんだけど住みやすくて、田舎みたいなところだよね。犯罪も殆ど聞かないしね。
- 地域の方へ一言どうぞ
仲通りを使ってもらいたいです。南千住仲通りを忘れないでほしい、っていう気持ちです。
イベントの前の日は品物作りで寝られないんだよね(笑)、と言う大塚さん。実はなぞかけが得意です。一つ披露してもらいましたのでご紹介しましょう。
「菊本の和菓子とかけて、子どもに対する躾と解く。その心は?」
「甘かったかな?」
店の前で爆笑しちゃいました。
実は「ARAKARA102とかけて?」というお題もありましたが、、こちらは敢えてお蔵入りです(笑)。
ぜひみなさんも、和菓子を買うついでにお題を投げてみてください。きっと、答えてくれるはず!
なんだか気軽に少し和菓子が欲しいんだよな~なんてときにふらっと寄ってみてください。そんな和菓子屋さんが「菊本」です。
<店舗情報>
- 店名:菊本和菓子店
- 住所:荒川区南千住5-37-7
- 電話:03-3807-7369
- 営業時間:10:00 - 19:00(火曜日定休日)
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