2015年10月23日夜8時。
南千住仲通り商店街の中にある旧大黒湯のシャッターが開き、沢山の靴が玄関に無造作に置かれている。
中にいたのは10人程度の男たち。南千住仲通り商店街の「だっちゃん市企画委員会」の面々だ。
「だっちゃん」とは、この近隣の子どもたちが使う言葉で「とっておきのもの」という意味。つまり、「だっちゃん市」とは、各店が工夫をした「だっちゃん」を地域の人たちに提供して知ってもらおう、という主旨で始められたこの商店街の町おこしイベントだ。この日は10月頭から隔週で開かれていた会合の第3回。今年で7回目となるこのイベントの目玉である「おでん」の試食会のために集まっていた。
当然、おでんと言ってもコンビニで買えるようなただのおでんではない。各店がそれぞれに持ち寄った特別な「だっちゃん」達を煮込んだスペシャルおでんだ。
「だっちゃん」は必ずしも各店が日ごろお店で出しているものではない。屋外イベントの関係上、調理場の制約もある。来場客に対して限られたスペースで滞りなく商品を提供する必要もある。そういった制約を踏まえた上で自分のお店の特徴も理解してもらえるような美味しいものが提供できるように、と各店がそれぞれに毎年頭を悩ませる。
まして「おでん」は一緒に煮込むもの。各店が自分で用意したおでんダネには自信があるとしても、味が全体として調和するかは実際に煮込んでみないと分からない。それを確かめるため、昔銭湯だった建物の高い天井の下にコンロが3台設置され、昼間から各店が用意していた具材が煮こまれていた。
やがて当日の進行などに関する議論が終わるころ、おでんの準備が完了し、試食タイムに入る。
「これは◯◯さんの◯◯です」という紹介があり、お互いに軽口を叩き合いながら試食が進む。ジョークは言い合っているが、当日お客様に出すものだから評価は真剣だ。
「お、これはいいね!」「これはイケるよ、間違いない」というような声もあがれば、「うーん、これは違うね」などと率直な声があがることもある。「これはこうしたらどうだろうか?」という提案も多い。
事前予想を覆して当日大ヒットだった「大福入りきんちゃく」。菊本和菓子屋からの一品。
この日は当日の進行について沢山の事が決まった。会合が終わったのは11時近く。「おつかれさまでした!」と言いながら男たちは解散した。
荒川区に43あるといわれる商店街。
戦後に発展した商店街は住民の生活必需品の台所インフラとして地域を長年支えてきましたが、時代とともにその役割は少しずつ減り、高齢化もあって今ではシャッター通りと呼ばれる商店街が増えてきました。三ノ輪から南千住に向かって伸びる、南千住仲通り商店街もそんな商店街の一つ。
それでも、これからの新しい道を開いていってまた活気を取り戻そう、と若手の商店主を中心に企画を始めた「だっちゃん市」は今年でもう7回目。各店がとっておきの「だっちゃん」=特別なものを提供し、商店街に足を運んでもらおうというこのイベントにあわせ、ARAKAWA102では参加店舗の紹介を中心とした商店街の特集を組むことにしました。
ぜひ記事を読んでみていただいて、11月22日イベント当日は、南千住まで足を運んで見ていただければと思います。
今年の「だっちゃん市」は、南千住の記憶を探るというテーマで、地域の古い写真や古地図の展示も行われるようです。
記事は随時追加していきますので、お楽しみに!
<第7回だっちゃん市概要>
- 日時:11月22日(日)10:00-14:30
- 場所:南千住仲通り商店街、大黒湯(古い写真や地図の展示など)
- 出しもの:スペシャルおでん、ホッピー、各店とっておきの「だっちゃん」の販売など。
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