西日暮里の交差点から町屋方面へ5分ほど歩いた道沿いのビルの2階にその工房はある。ガラス窓で、外からでも作業している様子が見える。
この道はよく通るのに前しか見ない私は(周りが見えてないともいうf^_^;)、2年前からあるというのに気づいていなかった。
螺旋階段を上ってドアを開けると、ん?歯医者さん?
いや、その奥がバイオリン製作かわむら工房だ。
もう一枚ドアを開けると木の匂いが、、、と思いきや、意外としない。
工房というと木屑が散らばり埃っぽく、工具や作りかけの楽器があちこちにぶら下がっているイメージだったが、ごちゃごちゃしたものがなく非常に綺麗。クラシックが流れ落ち着いた雰囲気である。
楽器を作るということに興味があったので、挨拶も早々にいろいろ質問を始めてしまう。多くは語らないがきちんと説明してくれる河村さん、やはり職人だ。
大学のサークルなどでコントラバスを弾いていた経験はあるが、バイオリンを弾いたことはなかったそうで、サラリーマン時代に趣味で西川口にあった教室でバイオリンを作ってみたのがきっかけで、バイオリン製作の道にはまってしまったそうである。演奏はしたことがなく、バイオリンを作った後に習い始めたらしい。
その後イギリス・ノッティンガム州にあるニューアークバイオリン製作学校へバイオリンの製作と修理を学ぶため留学。2008年に帰国し、2014年から西日暮里に工房を構えている。
河村さんのバイオリン製作のこだわりは、アンティーク仕上げ。使い込んでニスがすり減って艶がない感じや、色が変わった古い感じを出し、年代を重ねたように見せる。私でも聞いたことのあるストラディバリやガルネリという有名な楽器に近づけるそうだ。
製作した楽器は楽器屋さんへ卸したり、展示会などで販売する。その他、修理、メンテナンスなども行っている。
バイオリン、ビオラ、チェロの製作を行う。コントラバスは作らないんですか?と聞いてみると、コントラバスは楽器としての歴史が違い、構造が違うので作らないらしい。
こちらの工房ではバイオリン製作教室も行っており、随時生徒を募集している。
バイオリンが好き、音楽が好き、木工が好きなどいろいろな方が通われており、初心者(楽器を弾いたことがない、木工をやったことがない)でも丁寧に完成できるようにしっかり指導してもらえる。
「まったく初めてバイオリンを作る場合は、月4回通って2年ほどかかります」と河村さん。
木の塊から切り出してそれぞれの部分の形に削っていく。ボディなどは薄い板を曲げるのかと思っていたが、型紙を用いて曲線をを型紙どおりに削っていくそうだ。
個体ごとの音の違いはボディのアーチの形と木の厚みが大きくかかわっている。木の厚みは0.1mm単位で調整する。0.1mmの厚みの違いでずいぶん音が変わるそうだ。もちろんその他のパーツ、ペグ、駒、魂柱(こんちゅう)などでも音が変わるという。
バイオリンに使われる木材は、裏板、横板やネックはメイプル(楓)、表板はスプルース(ピアノの響板などに使われている木材)、指板には黒檀(エボニー)が基本的には使われる。
ここで魂柱(こんちゅう)というものに興味が湧いた。
魂柱はバイオリンのボディの中に立っているまさに柱で、表板と裏板をつなぐ棒である。
魂柱は表板と裏板の間に挟まれているだけで接着されていないので、すべての弦を取り外してしまうと倒れてしまうことがある。なので、弦の張り替えは1本ずつ行うほうがいいらしい。魂柱が倒れたままで弦を張ってしまうと、表板や裏板が割れてしまうこともあるそうなので、弦の張り替えの時などには注意が必要だ。
工房には一見工具が見当たらない。すべて綺麗に片付けられていて刃物や先のとがったものが見えるところにない。これは、何かの弾みで触れてしまったり、落ちてきて怪我をしないようにとの配慮である。
女性や子供にも安全にバイオリン製作の楽しみを感じてほしいという気持ちがうかがえる。
一つの楽器を完成させるのに2年というのは長いようだが、形や音の美しさを求めるとある程度の時間は必要。それだけ愛情込めて作った楽器を演奏できるのはとても感動できると思う。
世界に一つだけのバイオリン、弾けても弾けなくても作ってみると楽しいと思う。
バイオリン製作コース
- コース1:月2回(月謝:15,000円)
- コース2:月3回(月謝:22,500円)
- コース3:月4回(月謝:29,000円)
※月謝に材料費・部品代は含まれておりません。
※基本的には予め決めた曜日に通っていただきますが、席の空き状況によっては変則的になる場合があります。詳しくは電話またはメールでお問い合わせ下さい。
<店舗紹介>
- 店名:バイオリン製作かわむら工房
- 時間:12:30〜17:30(5時間)
- 場所:東京都荒川区西日暮里5-27-4、エル・アルカサルフジ203
- HP:http://kawamuraviolins.com/
※荒川102の取材情報は地図からも探せます。ぜひご活用ください。▶▶▶ 「荒川102取材マップ」
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